Profile
乾 雅人
銀座アイグラッドクリニック 院長
2010年、東京大学医学部卒業。同大学附属病院で初期臨床研修、外科専門研修を修了。同大学大学院の外科学(呼吸器外科)教室でラット肺移植モデルを用いた移植肺慢性期管理の研究に従事。2020年、銀座アイグラッドクリニックを開業。
2016年、医療コンサルティング会社を設立し、保険会社や製薬会社、会計事務所などの業務を補佐。
2020年、朝日新聞出版公式YoutubeのMCに就任し、医療に関する社会問題の企画編集報道を担当。
クリオ・メディシス株式会社の専務取締役に就任し、経営難の病院を対象とした経営再建業務を補佐。
Doctors Word
自己を尊重せよ真理を探究せよ社会に献身せよ
現在の仕事についた経緯は?
幼少時、京都大学医学部卒の父親が肺移植の動物実験目的に研究留学した。漠然と肺移植領域に興味を持ち、2歳年上の兄と共に東京大学医学部に進学した。兄は心臓外科、私は呼吸器外科の医局に入局した。肺移植を切り口に、臨床および研究の道で社会貢献する生き方を選択してきたが、大学院生時代に医師の過酷な労働と医療資金の制限という現実的な困難に直面する。問題解決のために『事業』という手段を考え、以降、事業なるものの本質について学び始める。在学中に医療コンサルティング会社を設立し、保険診療クリニックのM&Aや、生命保険会社や製薬会社の個別案件対応や企画立案業務などを遂行した。その後、自由診療クリニックの買収を行い、現在に至る。
仕事へのこだわり
『比較・類推・相対化』を心掛けている。
物事の本質を捉える際に先ず、保険診療と自由診療、首都圏の病院と地方病院、大学などの総合病院と市中の専門クリニック、等、対極にあるものを比較する。そこから幾つかの仮説が類推される。一旦の結論は出すものの、それが絶対的なものでなく、後に変化しうるものだと俯瞰する様に務めている。
キャリアの面では、外科を専攻するからこそ、研修医時代には総合内科外来を経験出来る病院を選んだ。胸部外科を専攻するからこそ、腹部外科研修が必須の母校東大病院を選んだ。移植外科に進むからこそ、腫瘍外科、感染症外科、外傷外科の修練を心掛けた。
加えて、臨床に従事しているからこそ、その環境整備である経営に視点を持つ様にしていた。医療に患者/顧客満足は必要だが、患者/顧客のみならず、医療従事者、関連業者(保険者や製造者)がそれぞれ健全な状態でなくては継続性がない。ビジネスの本質は問題解決であり、健全な意味で医療をビジネスと捉えることで、より良い医療の継続的な提供が可能と考えている。
開業(買収)した美容皮膚科クリニックは「生体反応を引き出す(細胞を活性化させる)」ことをコンセプトとして掲げており、利益率がどんなに高くともこのコンセプトから外れることは行わない。美容医療業界は、①存在が認知され、②大衆化が促進し、③コンセプト毎に専門化、と移行している。ITなどの他業界(Amazonなど)と比較・類推・相対化した結果、顧客(/患者)中心主義を愚直な迄に貫いた結果、経営が成り立つ時代と考える。
事業経営の本質を一層掴んだ後には、より自由度の低い(保護産業ゆえに値決めが出来ない)保険診療での経営に貢献したい。
そう思えるようになったきっかけ
学生時代『己の身を修める』べく、アメフト部に所属した。自身が想像出来うる全ての努力をし、retrospectiveな評価もその通りだった。それでも望む結果が得られなかった時、自身の想像外の努力にしか活路が無いことを悟った。1冊のビジネス書に光明を見出し、貪る様に書籍を読破した。うち2冊が「思考の整理学」と「初めての構造主義」であり、『比較・類推・相対化』というスタイルが出来上がった。以降は、ひたすらPDCAサイクルを実践し続けた。
アメフトは自身にとっては経験なクリスチャンの祈りの様なものだった。それを触媒として、自己理解、自己変革を成していった。後に、母校洛南の校訓(三帰。帰依仏・法・僧。現代用語では、自己を尊重せよ、真理を探究せよ、社会に献身せよ)を血肉化する作業だと理解した。
一例を挙げるなら、税金で部活動が支援されるなら、その税金の担い手である国民、社会に自分達は何を還元できるかを部員に問うた。学生が表面的に導き出せる答えは陳腐であり、それを超越する為に禅問答を繰り返す日々だった。
今なら、迷わず(広義の意味での)事業と答える。少なくとも人々の営みに広報価値は絶対にある。
今後の目標
私は医師として、事業家として、健全な社会が末代まで続くことを理念に活動している。現在、自由診療領域で顧客(/患者)中心主義を実践している。結果、患者/顧客満足と医療従事者の生活の質を上げ、関連企業に価値貢献し、それが更なる満足、質の向上、価値貢献に繋がる好循環が生まれている。このモデルの本質をより一般化し、自身が影響力を付けることによって、保険診療領域(最終的には肺移植領域)にも共有したい。加えて、経営難の総合病院を経営再建する補助業務の経験を活かして、将来的には母校である東大病院の経営改善にも貢献したい。全ての医者が事業家の要素を持つことで、社会規模でこの好循環が促進すると信じている。
大切なものを大切にし続ける為に、『事業』の重要性を訴え続けたい。
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