Profile
渡邊晃秀
自由が丘わたなべ泌尿器科クリニック 院長
2010年 杏林大学医学部卒業後に、社会医療法人社団健生 立川相互病院 初期後期研修。日本医科大学付属病院 泌尿器科専修課程修了。2019年1月 社会福祉法人康和会 久我山病院 泌尿器科医長に就任。2020年11月自由が丘わたなべ泌尿器科クリニックを開院し現在に至る。
Doctors Word
「Win-Win」は、人生を競争ではなく、協力する舞台とみるパラダイムである。
現在の仕事についた経緯は?
私の親族は主に公務員や教師などを生業としており、医療系とはほぼ無縁の家系です。
幼少期に将来は格好いい職業に就きたいと漠然と考えており、飛行機のパイロットや宇宙飛行士になりたかったと記憶しております。私が進学した愛知県私立東海高等学校は医学部進学者数が日本で最も多く、医師を目指す同級生たちの存在はとても大きかったように思えます。自身が怪我で大好きな野球ができない時期や、在学中に突然の同級生との哀しい別れを経験し、徐々に人体の構造や生命というものに興味を抱き、困っている人の役に立てる医師という格好いい職業を志望しました。
仕事へのこだわり
私が診察の中で最も大事にしているのは「問診」です。
医療のプロとして患者様がお困りの症状を改善すべく最大限に努めるのは当然であり、まずは困っているポイントを明確にする必要があるからです。人体の構造は実に複雑であり、好ましくない症状の原因をひとつの臓器だけで説明するのは困難です。一つの例として「頻尿」をあげますと、何となく膀胱や前立腺の機能障害を考えてしまいますが、半数以上はそれだけでは解決できません。尿路の閉塞や膀胱の過剰な収縮が原因であれば泌尿器科医が処方する内服薬で十分に対処できますが、そもそも尿量が増えている場合に頻回にトイレに行くことはある意味では機能は正常といえます。その尿量増加の原因として散見されるのが、飲水過多・高血圧・血液循環障害に伴う浮腫などです。従って、患者様それぞれの併存症や内服歴、飲水量や飲水パターン、飲酒や喫煙などの施行歴、トイレの位置や排尿姿勢などの生活背景も含む様々な要素から病態を推察した上で、きちんと治療に臨むべきであると私は考えます。しかし、投薬には必ず副作用を伴いますし、毎日内服することや内服量が増加することは生活様式に少なからず影響しますので、原因となりうるポイントを生活の中で工夫して改善を図ることを極力おすすめする様にしております。
これだけプライベートな部分に踏み込むからには、まず私自身が信頼してお話しをして頂ける存在であることが肝要です。私は幼少期を外国で過ごした影響もあるのか分かりませんが、意思疎通の能力や打ち解けるスピードは自身の長所であると考えております。特に泌尿器科は受診するのは敷居が高いと感じる方が多いのが実際であり、なかなか気になる点も言い出しにくいと思われますので、対等な立場で気兼ねなく話せる関係づくりを特に意識して努めております。
そう思えるようになったきっかけ
初期研修医の頃の私は、フットワークの軽さが自身の武器だと考えていました。考える前にとりあえず動き、教科書やガイドラインで調べてから検査を行い、結果を踏まえて治療を行う。それを繰り返して膨大な仕事量を卒なくこなすことを目標とする日々でした。
ある時、受け持ちの男性患者様の採血を終えて急いで検査に向かおうとした際に、忘れられない一言を頂きました。「先生。先生は血液検査を上手にしてくれて良い腕はもってるけど、患者自身を見ないと本物の医者にはなれないよ。」衝撃的な一言にはっと我に返り、すぐに言葉の意味を理解しました。寒い季節に、採血のために捲った病衣の袖はそのままの状態で、脳梗塞の麻痺がある患者様が自身で直すのはとても困難です。それからはその患者様が元気に退院するまで足繫く病室を訪ね、その度に1時間以上は病気のことに関わらず様々なことを話すようになりました。これ以降、時間を見つけてはとにかく患者様と話すようにしました。
我々の力が及ばず命を落とされる患者様も多数診て参りましたが、その中に私のことを何でも話せる存在であるとご家族に話されていた患者様もいらっしゃいました。亡くなられた後に教えて頂いたのですが、私が病室を訪ねた際に他愛もない内容のおしゃべりをすることが心地よく生きる希望を感じて頂けたようです。
春になったら桜が見られるかな、次のオリンピックまで元気でいられるかな、もうすぐ孫が生まれるから頑張らなきゃ、病気を抱える患者様たちはみな不安や希望など様々な感情をお持ちです。患者様と心を通わせて信頼関係を構築することで、やっと実のある診療ができることを学ばせて頂きました。
今後の目標
私がこれまでに培ってきたものを、少しでも多くの方に微力ながら伝えることができれば幸いであると考えております。現在はコロナ禍でもあり密を避ける必要がありますが、どんなに小さな規模でも感染対策をしつつ健康教室を開きたいです。また、地域の祭りが再開された際には健康相談、近隣の学校での性教育、など地域に貢献できる一医師として長く活躍できるよう日々努めて参ります。
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。