Profile

増野功一

南分動物病院 院長
岐阜大学農学部獣医学科卒業。シオノギ製薬(株)にて研究員として13年間勤務。在職中に博士号及び病理専門医を取得。退社後に臨床医となる。2022年に南分動物病院を開院。現在に至る。
増野功一

Doctors Word

現状維持は退化である

現在の仕事についた経緯は?

学生の頃を含め、私は15年にわたって病理学の研究に携わってきました。
製薬会社の研究チームの一員として、また一人の研究者として、充実した日々を送ってきました。いくつかの薬を世に出すことができましたし、個人的に行っていた研究成果が教科書の一文として取り上げられました。研究者として、目標にしていたことをやり切ったのだと思います。
その後、新しいチャレンジをしたくて、獣医臨床の世界に戻ってきました。

仕事へのこだわり

私の本質は病理医です。
病理学とは、病(やまい)の理(ことわり)を明らかにするための学問です。病気になってしまった動物たちに対し、「病気の原因は?」、「原因がどう影響しているのか?」、「診断は何か?」を探求します。
臨床現場における病理学の役割はとても大きいです。なぜなら、病院で皆様が受けている「治療」は「診断」に基づいて行われるからです。正しい診断なくして、正しい治療を行うことはできません。医療現場における診断には様々なものがありますが、病理学的診断は最も信頼される診断となっています。
病理学的診断を得るためには、症例から得られる所見(データ)を余すところなく把握することが必要です。さらに、病気に関する深い知識をもとに、所見を読み解いて診断に至る技術が不可欠です。
獣医の臨床現場では、個人の感覚や経験をもとに治療をされる先生が多いと感じています。それも正しい方法だと思います。でも、臨床医としての感覚/経験に、病理医としての知識/技術を融合させることで、より良い診療ができるのではないかと思っています。
「日々の診療に、病理医としてのエッセンスを加えること」これが私の仕事へのこだわりだと思います。

そう思えるようになったきっかけ

病理医とは一般社会で広く認識されている獣医師ではありません。
獣医療において、病理医のいる病院は大学病院などごく限られた施設のみになります。ほとんどの動物のオーナー様にとって、接点を持つことのない獣医師です。
通常の動物病院では、病理学的診断を得るために病理医のいる外部機関に検査を依頼しています。結果が出るまでに1-2週間のタイムラグがあります。オーナー様に病理学的検査の結果を説明する際にも、病理医の伝えたい内容が十分に伝えられていないケースが多いと思っています。
より優れた獣医療を提供するためには、オーナー様に、もっと病理学のことを身近に感じていただくべきだと思います。しかし、現状では身近に病理医がいないため、ほとんど認知されていないのではないでしょうか。
このような現状を少しでも変えていきたいです。診断までのタイムラグを短くし、検査結果を病理医の口から直接お伝えしています。できるだけ多くの人たちに病理学の事を知ってほしい、と願っています。

今後の目標

獣医療においては、日々新しい知見が発表されています。
病理でも、臨床でも、昨日までの常識が今日変わってしまうような事がありえます。古い常識をもとにしていると、誤った診断/治療をしてしまい、治るはずの病気が治せなくなります。
「もう十分」と思って歩みを止めてしまうと、周りに取り残されてしまいます。常に勉強し、新しい技術や知識を貪欲に取り込んでいきたいと思っています。
私の座右の銘は「現状維持は退化である」です。これを常に意識し、常に前に進んでいくことが、私の目標です。

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。