Profile
三宅ヨシカズ
大阪あべのリンパ浮腫クリニック 院長
関西医科大学医学部卒業。関西医科大学形成外科学講座入局。形成外科専門医取得直後から10年以上にわたり八尾市立病院形成外科の診療科長、部長を務める。2021年8月大阪あべのリンパ浮腫クリニックを開院。
Doctors Word
運勘技根
現在の仕事についた経緯は?
医師になった理由は、父が内科の診療所をしていて、小さいころから休憩時間に診療所に遊びに行ったり、休日当番医の時に呼び出される父の姿を見たりと、医師が最も身近な仕事だったからです。おそらく親としては医師になれば診療所を継ぐものと思っていたはずです。ただ、大学で医学の勉強をしていく中で、内科には興味が持てず、自分の手術・技術で目の前の患者さんを治したいと考え、形成外科医になりました。形成外科医になってからは、専門を決めることなく、いろいろな症例を扱ってきました。その中で、がん治療後のリンパ浮腫で悩んでいる方が多くいること、適切な治療をすればリンパ浮腫の方のQOLも改善できることが分かりました。さらに、最新の検査機器と技術の進歩によって、より効果のある治療が可能であることが分かり、この仕事を専門にやっていこうと思い、大阪あべのリンパ浮腫クリニックを開院しました。
仕事へのこだわり
形成外科は頭のてっぺん~足の先まで、生まれたての赤ちゃん~寝たきりの老人まで守備範囲は広く、基本的には手術治療によって機能や見た目を改善することを目標としています。同じ腫瘍を取る、瘢痕を修正する、という問題に対して術者によって多くの答えが考えられます。手術をする時にはできるだけ多くのプランを考えたうえで、最も良いと思う方法を自分で選択し、実際の手術では考えた通りにプランを実行する必要があります。できるだけ多くのプランを考えつくためには、知識も経験も想像力も必要ですし、そのプランを実行するにはそれを可能にする技術も必要です。考えたプランの中には、本で読んだだけ、学会で報告を見ただけのような自分でやったことがない手術方法も含まれます。そのような手術をしている時に悩んだ場合には直観・ヒラメキを大事にしています。これまで勤務していた八尾市立病院は、中小企業・工場の多い地域ということもあり、仕事中の事故による手指切断の再接合手術を一晩中したこともありました。地域がん診療連携拠点病院(高度型)でもあるため、乳がん治療後の乳房再建なども多く、さらには大腿動脈の血栓内膜除去や下肢バイパス、下肢静脈瘤、透析のシャント作成など血管外科のような手術も行うような「何でも屋」でした。「何でも屋」では、全身の詳細な解剖や、従来~最新の治療方法など広い知識が必要になります。本来は、実際に見て、教えてもらってというのが普通ですが、それもできないため、知識の獲得・吸収は学会や論文などから行っていました。最近は他人が手術している動画を見ることも可能になってきたので、様々な範囲のたくさんの手術を見ることができます。このようにして得た知識を手術中に臨機応変に使い、悩んだ場合には直観を大事にするのがこだわりです。
そう思えるようになったきっかけ
専門医を取得してすぐに診療科長となり、独り立ちしたので、困った時や悩んだ時にすぐ誰かに教えてもらうということができない環境でした。手術自体は解剖さえわかっていれば、切る、剥離する、縫うなどの手技の足し算ですので、あとは手術しやすいような視野、術野を確保し維持するなどの工夫が大事になってきます。この工夫のヒントは学会での講演を聞くこと、論文を読むことから得ることも多かったです。また、悩んだ時には直観を大事にしてきましたが、これもうまくいくことが多かったように思います。
今後の目標
医師という仕事は相手(患者、医療従事者など)のある仕事であり、すべてが思いどおりに行くものでもありません。専門としているリンパ浮腫の手術治療は、15~20mm程度のキズから1mm以下のリンパ管と静脈を顕微鏡で見ながら吻合するという非常に細かい治療です。この小さな治療に大きな期待を持って、来てくださる患者さんが多くいます。その期待に応え、『生活の質"Quality of Life"の向上』に貢献できるように最善の治療を提供していきたいと思います。
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