Profile

佐藤洋

富士宮市立病院 院長
1985年浜松医科大学医学部卒業。聖隷浜松病院、静岡市立静岡病院での勤務、浜松医科大学大学院での研究、ロヨラ大学シカゴ校への留学を経て、浜松医科大学附属病院循環器内科に勤務。講師、病棟医長、副臨床研修センター長を務める。日本内科学会、日本循環器学会東海支部評議員。2018年より富士宮市立病院病院長となり現在に至る。主な研究論文は、心筋細胞のカルシウム代謝 (Circulation, 2000年)、虚血性心疾患の糖代謝異常 (Heart, 2005年)、MRIによる心筋症の鑑別診断(Journal of Cardiac Failure, 2009年)など多数。
佐藤洋

Doctors Word

生涯一内科医

現在の仕事についた経緯は?

医師には、人々のために役立ち尊敬される仕事として、子供のころから希望してなりました。大学での実習を通じて救急医療に興味を持ち、その最前線の一つである循環器内科を選びました。市中病院での研修や留学を経て、大学病院に約20年間勤務し、臨床、研究、教育に当たって参りました。50歳を過ぎて臨床や研究は後輩に任せるようになり、管理の仕事が多くなっておりました。大学での役割も終盤と感じていた時、以前より親交のありました当院の前院長が定年間近となり、後任として依頼されました。教授より大学長に推薦して頂き、富士宮市長に正式に承認されて2017年に副院長として赴任し、2018年から現職に就いています。

仕事へのこだわり

新人時代は、循環器内科医として救急医療に携わる仕事に誇りを持ち、循環器に関する救急業務は何でもやろうと心掛けました。特に、急性心筋梗塞や急性心不全は夜間に発生することが多く、深夜の呼び出しによる緊急カテーテル治療や集中治療室での管理には積極的に参加しました。新人の頃、このような救急業務は、ほぼ無給でしたが、休日や正月も返上で診療にあたりました。また、心筋梗塞の危険因子としての糖、脂質代謝異常に興味をもち、いくつかの臨床研究を手がけました。さらに、大学院時代には、動物実験による基礎研究を行い、卒業後には米国に留学して多くの知見、知己を得ました。研究を通じて学ぶことの重要性を痛感し、後輩にも積極的に学会や論文発表を行うよう指導しています。 若い頃は、循環器内科医としての専門性を高めることを特に心掛けていましたが、年を経て経験を重ねるうちに、心臓だけでなく、全身を診ることの必要性を感じるようになりました。「病気を見るより人を診る」、「医は仁術」をモットーに現在は診療しています。画像診断が発達した現在では、おろそかにされがちな問診や聴診器による基本的な診察の重要性を心掛け、後輩の医師にも伝えています。現在は、超高齢化社会を迎え、多様な病気を複数抱えて、社会的にも孤立している患者が増加しています。専門の診療科以外にも広い知識を持ち、加えて社会的にも患者を支えていけるような医師、スタッフを育成していきたいと考えます。

そう思えるようになったきっかけ

新人時代は、食生活の欧米化がよく唱えられ、急性心筋梗塞をはじめとする動脈硬化に関連した、いわゆる生活習慣病が急増していました。当時は、現在のステント治療などに比較して効果に限界のある治療しかできず、狭心症や心筋梗塞の再発が数多く見られました。動脈硬化の原因としての糖、脂質代謝異常を管理することの必要性を痛感し、現在メタボリック症候群として認識されるインスリン抵抗性や酸化LDLコレステロールに興味を持ちました。また、米国への留学にて世界中の優れた研究者たちと接することで、日本国内の医療界という狭い世界に閉じこもらず、広く世界に出て吸収、発信する必要性を実感しました。 大学病院では、専門化が進んでいて、循環器医は心臓の病気だけ診ていればよい傾向があります。しかし、現在は、超高齢化社会を迎え、患者は、多様な合併症を持っており、そのなれの果てというべき心不全をおこすケースが非常に増加しています。合併症は、骨や関節の痛み、肺炎、消化管の出血など様々です。このような全身の病気に対応できる知識、技量がこれからの医師には求められると痛感しています。

今後の目標

個人的には、全身を診る総合内科医としての技量をさらに磨きたいです。また、病院長として、経営、管理のノウハウを身に着けて病院運営を順調に行えれば幸いです。当院は、富士宮地区で唯一の総合病院です。当院の使命は、急性期、特に救急医療に対応することが第一ですが、地域包括ケアシステムの一員として、回復期医療にも対応することも大切です。昨秋、「新・地域包括ケア病棟」を開棟しましたが、その一歩といえます。医師やスタッフを安定して確保し、総合的な医療体制を維持すること、病院から在宅へとつなげる仕組みづくりに寄与し、地域の病病連携や病診連携を推進させることを目標としています。

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